3-1. 抜きの基本
(1) 切口形状
平板を抜いたとき、その端面の切口は、下図のように4層構造となり平滑とはならない。
ダレ = 滑らかなR形状 せん断面 = 光沢があり縦筋がある 破断面 = 材料をむしりとった感じ
バリ(かえり)= ギザギザがあり触ると痛い
板厚
(2) 金型と切口形状の関係
プレス抜き加工においてダレ、バリの発生原理は、下図による。
パンチ (上型) が下降し材料に接触し、さらに 下降すると材料のパンチ及びダイの刃面側に ダレが発生する。
さらに下降するとパンチ及びダイの刃先より材 料にクラックが発生する。
このときパンチ、ダイ刃側面がせん断面となり クラックが破断面となる。
パンチ側クラックとダイ側クラックがつながり抜 きが完了する。
従ってパンチが材料の2/3程度入った段階で 抜きが完了する。
パンチ側クラックと ダイ側クラックがつながる ため パンチダイに適正な隙間が必要になる。
この隙間をクリアランスと呼ぶ。
このクリアランスにより バリ が発生する。
(3) 適正クリアランス
プレス抜き加工においてクリアランスは重要で少なくても多くても不具合が発生する。
1) 適正クリアランス
1
2) クリアランスの過小
適正なクリアランスはせん断面が板厚の 1/3~1/2の割合で全体に平均している。
せん断面の量でクリアラアンスの状態がある 程度判断できる。 せん断面の量が部分的に 異なる場合は クリアランスが一定していない ことが多い。
3) クリアランス過大
クリアランスが少ないときパンチとダイ刃先 より発生する クラックが一致せず 2次せん 断面が発生っする。
プレス機精度により金型が破損し易い。
2次せん断
(カジリ)
パンチとダイ刃先のチッピングが起き易い。
抜き圧力は多くなるが抜きゾリは少なくなる。
ヒゲ状のバリが発生する。
クリアランスが大きいとダレとバリが大きくな り製品精度が不安定となる。
抜き圧力は少ないが抜きゾリは大きくなる。 パンチとダイの刃側面が摩耗すると この状 態になることが多い。
-クリアランスとの関係-
クリアランス バ リ ダ レ抜き圧力抜きゾリ過 小 過 大
ヒゲ状 大
小 大
大 小
小 大
(4) 適正クリアランス値
クリアランスは被加工材(製品材料)の材質及び板厚によりその数値は異なる。 金型は加工を繰り返すことにより摩耗を考慮し製作時には下記表の少ない数値 で製作することが好ましい。
実用値 = % X 被加工材板厚 = 片側クリアランス
被加工材質 鉄系 銅 黄銅 りん青銅 アルミ系
% 5~10 3~ 9 4~ 9 5~10
ステンレス系 7~11
4~ 8
-各社経験値により標準可している-
∞∞【例題】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
材料SPCで板厚1.2 丸ワッシャ-形状で外形 20 内径 5 のパンチとダイの寸法は?
上記表よりクリアランスは 5 % t とする。
外形抜きの パンチ= 20 - (1.2 X 0.05) X 2 = 19.88 ダ イ = 20 (製品寸法通り)
穴抜きの パンチ= 5 (製品寸法通り)
ダ イ = 5 +(1.2 X 0.05 ) X 2 = 5.12
(5) 抜きバリ高さ
通常抜きによりバリは必ず発生し、そのバリの高さは板厚に関係する。
バリ高さ = 板厚の 5~10 %
クリアランスの設定、金型構造により異なる。 パンチ、ダイの刃先が摩耗するとバリは高くなる。
∞∞バリ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
バリは必ず発生する。
理屈ではそうなるが、それはプレス屋の理屈。
安全の問題や機能としての問題からバリは、製品設計者としてはやはり困る。
バリは、我々プレス屋としても出したくて出しているわけではないながら困った存在。
バリレスと称して、バリを板の真ん中に集めることが出来る。(後述) 色々制約があり、その説明を某設計者にしていたら 「両面バリって出来ます?」
「なんに使うのですか?」と私
「聞いてみただけ・・・・」
(6) 抜き圧力計算
抜き作業における必要圧力は下記計算式により求めることが出来る。
但し、得られた結果は概算で金型形式、金型摩耗状況、クリアランス等により 若干異なる。
P = L X t X S
P: 抜き圧力 (Kg) L: 抜く形状の全周長 (mm) t : 被加工材の板厚 (mm)
S: 被加工材のせん断抵抗値 (Kg /mm2)
-通常はTonで表現する。-
被加工材 せん断抵抗値 (Kg /mm2) 鉄系 SUS430 SUS304 アルミ系 黄銅板 ケイ素鋼板 銅
35 45 55 20 30 55
25
∞∞【例題】∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
材料SPCで板厚1.2 丸ワッシャ-形状で外形50 内径30の総抜型の場合の抜き圧力は? 外形部分 1.2 X (50 X π) X 35 = 6.594Kg 内径部分 1.2 X (30 X π) X 35 = 3.956Kg 総抜型なので 6.594 + 3.956 = 10.550Kg → 約11Ton
∞∞プレス災害∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
プレス業での労働災害は20年程前までは頻繁にあり、指切断・手首の潰れ・等、 悲惨な事故は1社当たり年に1~2件は発生していた。
プレス屋として指が10本まともでは一人前とは云えない。・・・という時代。
労働基準監督署が中心となり安全対策が進み、15年程前からは殆ど事故は 発生しなくなった。
(安全対策)
(1)足踏み起動から両手押しボタン起動(下死点前に手をボタンから離すと瞬間停止) (2)多光線式安全器の浸透。 (3)安全教育、講習の徹底。 (4)順送等自動運転化。
従って、プレス加工から災害が消えたと思っていたら海外(東南アジア地区) のローカルプレス屋では依然として安全対策のない機械で作業をさせており、 やはり災害は多いとのこと。
プレス技術の海外移転が進むなか安全対策技術も同時に移転して欲しいもの。
3)プレス技術の基本
3-2. 曲げの基本
(1) 曲げ断面形状
曲げ作業においてその断面は下図のような関係がある。
中立軸に対し内側は圧縮応力、外側は引張 応力が作用する。
中立軸は曲げ部分において必ずしも板厚の センターではなく若干内側に移動する。 →曲げ部の板厚が減少する。
曲げ外力がはずれるとその圧縮、引張応力 の反発により曲げ角度が開く、これをスプ リングバックと呼ぶ。硬い材料ほどこの現 象は顕著に現れる。
(2) 曲げ展開寸法計算方法
曲の展開寸法は、基本的に中立軸の長さを求めることにより得られる。
曲げ部の中立軸は板厚、曲げ角度にもよるが板厚の40~45%の位置となり、 計算上経験値を採用する。
40~45)×2π×θ/360+B
L
中立軸移動率=経験値
L = 展開寸法
A,B= 曲げ応力のない部分の長さ
(3) 簡易計算方法
直角曲げの場合簡易的に下記計算方法がある。
実作業においてはこの方法が一般的に採用されており経験値で修正している。
R = 曲げ内R T
= 材料の板厚
L=A+B+1/2T
L
=展開寸法
A,B =内側長さ
1/2T=板厚の約半分(経験により修正)
曲げ元にストライキング(後述)を入れた 場合に適用。
∞∞曲げ展開∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
曲げの展開寸法は、曲げ型の構造や曲げダイRの付け方、材料板厚や硬度の変化、 また加工油の質と量で微妙に異なる。
また、後述する曲げによる問題点が原因して計算通りの結果とならないことが多い。 昔は複雑な曲げの場合、曲げ型を先に造り実験後ブランク(展開)を決めることが あったが、今はそんな時間も費用も許されない。
(4) 曲げ金型構造 ・ U曲げ構造
絞り曲げと呼ばれることもあり、曲げ型では一般的で殆どの曲げ加工でこの構造を採用 されることが多い。
主な部品は曲げパンチ、ダイ、スプリングパッドで構成される。
曲げ位置等の寸法精度が安定し易く同時に 複数の曲げ加工が行えるが曲げによる引張 られが大きくその対策が必要。
曲げ直角度出しが困難で何らかの対策が要。
スプリングパッド力が弱いと製品平面度が不 安定となり易く、強いと曲げ直角度が開き易い。
曲げダイのRは被加工材板厚の3倍程度が一 般的。
(曲げダイR)
大 → 曲げ高さが低いとき曲がらない。
小 → 急激に曲げるため直角度不安定。 製品の曲げ側面に凹み状の横筋 が入る。
また、ダイが焼き付き易く製品の曲 げ側面に引っ掻き状の縦筋が入る。 一般的にこれを「雨ふり」と呼ぶ。
・ V曲げ構造
ヤゲン曲げと一般的に呼ばれ、簡易曲げ等に多く用いられる。
主な部品は曲げパンチとダイで構成され、金型費はU曲げ構造に比べて大幅に安価で あるが、一箇所の曲げのみの加工となる。
曲げ位置精度は不安定であり曲げソリが発生 し易い。
製品の曲げ側面と底面にそれぞれ凹み状の 横筋が入る。
曲げ直角出しは比較的容易。
曲げ高さが低い場合この構造では曲がり難い。 ダイ肩幅は板厚の6~8倍が一般的。 パンチ幅はダイ肩幅と同寸が一般的。
被加工材はダイの両肩に乗っていないとスベリ が発生し曲がらない。
∞∞抜きバリ方向と曲げ方向∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
製品機能を考えないとして、抜きバリは曲げ内側が理想
→曲げ外側が抜きバリの場合 バリ部にクラックが入り易い。
順送型において、バリに対する曲げ方向により金型構造は異なる。
バリが内側に曲げる方が、金型構造的に安価。また平面度等の精度も安定する。
(5) スプリングバック対策
U曲げ型構造においてはスプリングバック対策を考慮し金型を製作する。
その対策で一般的な方法としては曲げパンチ先端に突起状の出っ張りを設けた
ストライキング式とクサビ状のVノッチを曲げの前工程(ステージ)で打つ等の方法がある。 尚、スプリングバック対策と曲げによる引っ張られ対策を兼ねる場合が多い。 ・ ストライキング
曲げパンチ先端に突起状の出っ張りを設け その部分を材料に食い込ませることによりス プリングバックを防止する。
ストライキングにより製品曲げ根本内側に突 起幅分の凹みを生じる。
アウトサートが曲げ内側ギリギリで設計され ている場合凹みに樹脂漏れが発生するので 注意する。
ストライキングの幅は約板厚分とし最小は0.6 程度、高さは高めに設定し、実験後調整する。 実験後低くするのは容易だが高くするは困難。 ストライキングはチッピングを起こし易い ので曲パンチの硬度に注意を要する。
・ クサビ(Vノッチ)
・ 三角リブ
曲げの根本に三角形状のリブを入れると曲 げ直角度は安定し易い。
製品の曲げ部強度は格段にアップする。 金型構成部品が増えるため金型コストはア ップする。
曲げ幅の狭い部分の三角リブ設置は曲げ高 さ方向の寸法精度が安定せず、伸びによる。 展開寸法算出に注意を要する。
三角リブの曲げ幅方向の位置は、中心より 均等な位置を選択する方が良い。
∞∞失敗例∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
実験後に展開を決めたいのは前述したが、実験をしたことによる失敗例。
バーリング形状の内径絞りで下穴(絞る前の穴)径を決める実験
絞り型を先に造り、ブランクはドリルで穴を明けた。実験した結果きれいに 絞れたので穴抜き型を造った。
実験の結果と異なり、バーリングの先端は割れるし高さも違う。
→穴の断面が、ドリルは横方向の筋に対しプレスは縦方向の筋。 結局、金型を作り替え。
実験方法を間違える、または手を抜くと思わぬミスとなる。
3)プレス技術の基本
3-3. 抜きによる問題点
(1) 抜き穴最小径
一般的に丸穴は、通常の金型構造で板厚の1.5倍及び0.5が最小と云われている。
金型構造でパンチガイドを充分考慮して板厚と同寸まで実際には行われている。
また、鉄系より柔らかい材料の場合で板厚(t=1.2以上)は板厚よりも細い径で加工し ている実例がある。但しパンチ破損による交換が容易な金型構造とする。
市販標準パンチの最小径は0.5。
異形状長穴及び外形切り欠き等の幅は同様に板厚の1.5倍以上で最小は0.8がのぞ ましいが現実は板厚の1.2倍程度まで行われている。
(2) 抜きによる穴及び外形の変形
(3) 抜き精度限界
外形に近い穴、穴と穴が接近している場合いずれか が変形する。
抜きにより材料は、板厚方向に移動する力が発生す る。 そのため、前工程(ステ-ジ)で加工した部分が 変形することがある。
精度を要する外形または穴については、精度を要しな い穴または外形を加工した次以降の工程(ステ-ジ) で加工する。
厚板になるほど変形具合は大きい。
変形の心配がない間隔は穴の端から穴の端(または 外形)までが板厚のの約2倍以上要するが穴の大きさにより異なる。
前項の抜きによる変形要因がない場合で通常公差 は一般的には外形及び形状穴で0.05 丸穴で0.02程度。
但し、抜きバリが次工程(ステ-ジ)で潰れ縦バリ横 バリとなり結果として穴(外形)の寸法が変化するこ とがある。
横バリ不可で縦バリ可の場合は次工程(ステ-ジ) でバリを潰さない様金型に逃がしを設ける。
(4) 抜き穴位置精度
これも抜き及び曲げによる変形がないものとして同一工程(ステ-ジ)にて加工すれば 一般的に公差幅で0.05程度は可能。
但し、パンチガイドは充分な金型構造とする。
工程が別となる場合 単発形式で±0.1 順送形式で±0.05 (5) 抜きによるソリ
抜き加工により被加工材のソリ(平面度変化) が発生する。
抜きの過程において応力が被加工材を曲げる 方向に変化させる。
クリアランスの量及び金型構造によりその量は 異なる。
抜いたもの(ダイの上に残るもの)はストリッパ (材料押さえ)の押さえ力を強くすることにより ある程度ソリを減少される。
抜いたもの(ダイの上に残るもの)のソリ防止は 一般的には困難。
→単発形式の外形抜き型において抜いた製品 の抜きソリの防止は困難。
ダイ及びパンチの刃先の丸み(磨耗)により発 生することもある。
3)プレス技術の基本
3-4. 曲げによる問題点
(1) 最小曲げ高さ
前述のU曲げ型形式において、曲げダイのRにブラ ンクが掛かっているとダイRによってブランクが横方 向にげることとなり曲がらない。
(2) 低い曲げによる変形
(3) 曲げ側面の出っ張り
曲げダイRは板厚の3倍以上が理想とするとブラン クは曲げパンチから4倍Tとなり展開伸びを1/2Tと すると、最小曲げ高さは3.5倍Tとなる。
上記最小曲げ高さ以下の曲げ高さは下図のように変形し易い。 これは材料中立軸内側の圧縮応力が曲げ高さ方 向の材料肉が少ないため曲げ高さ方向に逃げる ことにより発生する。
曲げ加工により被加工材は幅方向に曲げ部が 若干膨らむ方向に変形する。
つまり、曲げ巾の根本寸法がプラスに変化する。これは②項と同様に材料中立軸内側の圧縮応 力により被加工材端面に材料肉が逃げるために発生する。
また、ストライキングによる材料肉逃げが発生するので曲げ幅方向の精度を要する場合にはその分ブランクを逃がす等の対策が必要となる。
曲げにより膨らむ量としては金型構造等により異なるがほぼ板厚の15%程度。
(4) 段曲げの内R
(5) 曲げ近くの穴の変形
通常比較的低い2段の曲げは同時に加工されるこ とが多い。その際、曲げの内側(曲げパンチ側)に 若干のRを必要とする。
板厚、段曲げの高さによるR寸法は異なるが、段 高さが5mm程度以下で0.2~0.5段高さが5~10 mm程度で0.3~1.0。
10mm以上の段高さは2工程で曲げる方が好ましい。段曲げ同時加工は一般的に段高さ以外の寸法精 度は安定し難い。
段曲げのブランクの展開寸法は、板厚が変化する ため通常の計算では異なる結果となる。 従って、経験値により求める。
(6) 曲げによるソリ
曲げ工程(ステージ)前に加工した穴等の近くを 曲げる場合、曲げにより引っ張られ穴寸法に変 化が発生する。
引っ張られが発生する曲げからの距離及び引っ 張られる量は板厚、穴の大きさ及び金型構造に より大きく異なる。
穴が引っ張られ大きくなることは結果として曲げ 高さ方向の寸法もプラス方向に変化する。
穴寸法及び曲げ高さ寸法の精度を要する場合 は曲げ工程(ステージ)後に穴抜き工程を行う。
但し、抜きバリ方向は曲げの外側であること。
→曲げの内側がバリ方向の場合抜きダイの 強度が不足し破損することがある。
曲げ加工において、その圧縮応力、引張応力 の反発によりスプリングバックが発生し結果とし て曲げ直角度に影響するが、同時に被加工材 平面度も同様に影響する。
スプリングパッドの押さえ力の調整によりある程 度減少する。
曲げる方向と反対側にソリが発生する。 一般的に次工程(ステージ)で修正することが多 いが修正により曲げ直角度が変化する可能性 があるので注意を要する。
∞∞曲げの問題∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
曲げによるトラブルは、上記の(5)(6)に起因することが多く、これらは長年培われたカンに より解決しているのが現状。計算や金型精度では解決せず、悩みの種となっている。 カンが狂うことも多くプレスの難しさとなる。
3)プレス技術の基本
3-5. その他の問題点
(1) エンボス
半抜きと呼ばれるエンボスは通常ダイとパンチを 同寸で製作される。
抜き概念での説明により板厚のほぼ65%で抜きが 完了するため被加工材厚の半分以上の高さを要する 場合パンチ刃先にRを付け破断面を防ぐ必要がある。
半抜きエンボスの最大高さは板厚の70%が限界。
板厚分程度の高さを要する場合は、ダイの寸法を 所定としパンチ寸法をそれより大きく設定する。
その際パンチの入る深さを最大板厚の70%とし径は 凹部空間と凸部の体積が一致する寸法を設定する。
(2) バ-リング
下穴を前工程(ステージ)で加工し突き上げる方法と 下穴と突き上げを同時に行う方法がある。
下穴と突き上げを同時に行う場合下穴抜きカスの処理 が問題となり結果として製品が打痕傷不良となることが 多い。
単発作業のように作業者が存在し確認する必要がある。 順送または工程に余裕がある場合は下穴と突き上げは 別工程(ステージ)が好ましい。
バーリング凸部の外径と内径については、肉厚で50% ~70%で設定する。
タップ用の場合は肉厚の厚い70%近くで設定し、外径を ガイド等で使用し精度を要する場合は50%近くで設定す る。
(3) 補強ビ-ト
(4) バンピング
(5) 曲げ側面内側のエンボスまたはバ-リング
薄板の材質、板厚をアップさせずに強度を増加させる ため補強用のビードを設けることがある。
曲げと同様に近くの穴変形と製品平面度の変化が発生 することがあるので注意。
高いビードの場合ビード周りの凸側に曲げと同様のスト ライキングを設けることにより安定することがある。
被加工材は種々加工により平面度が工程(ステージ)を 追うごとに悪化する。
これを矯正することを目的としてバンピングを行うことが ある。
バンピングは星打ちまたは七子目ナラシと呼ばれること もある。
一般的にバンピングは裏表両面加工とする。
製品の面に接触してスライドする部品がある場合バンピ ングにより動作不具合となるためその部分は打たないよ うにする。
バンピングの目(ピッチ)は細かい方が効果は大きいが 金型コスト高及び穴間距離の変化等の問題も発生する。
曲がった側面の内側に凸となるエンボスまたはバーリング がある場合、曲げパンチを刃先まで逃がすとその曲げの 根本はボケる。
結果として、曲げ高さ方向の寸法変化となる。
ボケが不具合または曲げ高さの精度を要する場合、曲げ 部に捨て穴を設ける、または曲げパンチをカムによりスラ スト方向に移動させる。
カム使用は金型コスト、品質、生産性で不利となる場合が 多い。
∞∞∞設計とメーカーの連携∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ プレス加工における問題点はこれ以外にも多くあります。
上記の問題点は、一般的な通常技術で問題ない範囲を示しており現実にはもっと厳しい 条件で作業は行われています。
製品機能として、可能であるならば上記条件で製品設計が行われればコスト・品質で有利 になります。
製品機能として、条件を満足出来ない場合には部品メーカーに努力を求めるか、別な方法 を設計・メーカーが協力して模索することも重要ではないでしょうか。
但し技術進歩は、困難な条件を乗り越え現実のものとしなければならないことも重要です。 ∞∞∞職人∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ とかく技術者(職人)は失敗はしたくないもの。でも技術で他人には負けたくない。 出来ないと言って出来てしまうのも技術者の癖。
困難、普通では出来ないと言いながら密かに挑戦したくなる。
期待されている、頼られているとなると張り切ってしまい予想以上の結果を出す。 そんな心理をうまく利用するのも技術では・・・・
3)プレス技術の基本
3-6. 順送レイアウト作成手順
(1) ストリップレイアウト概念
単発工程形式においては、工程の長短が部品コストに大きく影響するため工程短縮に注力される。 順送形式は、ステージの長短が使用プレス機に変化がなければ部品コストに影響することは少ない ので、レイアウト作成において重視されるのは、
・量産品質安定性 ・設計変更対応 ・金型強度
・生産性 とすることが一般的。
ステージが短い場合・・・金型コストは有利ながら品質的に不安定となり易く 設計変更に応じられないこともある。
ステージが長い場合・・・必要以上に長くしても金型費は不利になり品質的な バラツキ要因となり生産性(回転数)も悪化する。 適正なステージ数により、品質安定性と生産性が決まる。
∞∞設計変更∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最近の製品設計変更は、曲げ追加等の形状が極端に変化する内容が多く金型対応に苦慮。 変更を想定してステージ数を決定するとなるとかなりなムダも発生。
もし、製品設計がある程度変更が想定できればその情報を金型設計に伝えることもムダ 防止になり変更対応に有力。
∞∞ステージ数∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 同じ製品を複数の金型メーカーでレイアウトを作成すると、その長さは全く異なる。 製品が複雑になればなるほどレイアウト長さは様々になる。
メーカーにより考え方が異なり、良否の判定は結果(コスト・品質・生産性)によるがレイアウト 決定が極めて重要であり、それがそのメーカーの技量ともなる。 金型費がメーカーにより異なる要因でもある。
(2) 生産設備
1-2 プレス機械の種類と用途 及び 2-2 金型形式と選択基準参照
順送生産に使用される自動プレスラインの構成としては、
・アンコイラ 材料を保持する機械
一般的に順送形式で材料はコイル材を使用する。
1本の材料を乗せるシングルと2本の材料を乗せ交換出来るダブルがある。
コイルの径は大きい方が材料交換回数は減少する。
・レベラー コイル材の巻き癖を矯正する機械
アンコイラから材料を引っ張る目的もある。
上下2段に数本のローラーがあり、その間を材料が通過することにより コイル材の巻き癖が矯正される。
ローラーの径は細い方が良く本数は多い方がよい。
ローラーの径が細い場合に逃げを防止するバックローラ機構の機械もある。 レベラーにより平面度精度に影響が大きい。
・フィーダー 材料をプレス機(金型)内に所定長さ(送りピッチ分)を断続的に供給する機械
プレス機上死点近辺で材料をクランプし下死点近辺でクランプを解除し金型 パイロットで送り長さを矯正する。→レリーシング
2本のロールで挟み供給するロールフィードと材料を板状のものでクランプし て供給するグリッパフィードがある。
・プレス機
(3) ストリップレイアウト作成手順
(1)項の概念を基本として一般的に下記手順にてストリップレイアウトを作成する。
・材料歩留りのよい配置を選択する。
L字形の製品は斜め取りにすると材料歩留りは向上するが、平面度の精度を要求される場合 は矯正が難しいので注意を要する。
・基本的には送り方向を短く、材巾方向を長くするように配置。
プレス回転数を早く出来る。1本のフープ材から多くの製品が加工できる。
・バネ材で直角曲げがある場合。
材料ロール方向に対して平行にならないようにする。→曲げによる曲げ根本クラックを防ぐ。
・送りさん(キャリア)と最終カットが近くなる配置を選択。
つまり、さんと製品がつながっている部分の強度を確保する。
・製品排出時 難なく排出可能な配置を選択。
下曲げ等がダイに引っ掛かり排出不完全となる配置は避ける。
2) カットパンチ形状決め・・・外形をカットする手順を決める。 ・金型強度(ダイ・パンチ)がそこなわれない形状とする。
・曲げ等による変形要素を考慮する。
片側曲げの場合、曲げにより材料が引っ張られ寸法変化または変形が考えられる。 曲げ後に外形をカットする等の対策が必要。
・最終カットはバリ高さが許容される部分を選択。
ステージ途中でのカットや穴は、順次送り平打つことによりある程度バリは潰れるが、 最終カット部のバリは潰れないためバリ高さを許容される部分を選択する。
→製品設計者は最終カット部分を指定することが好ましい。 金型設計者は確認する。
・カットパンチとカットパンチの合わさり目(=マッチング)はバリ対策が必要。→後述 ・複雑形状穴も同様。 3) パイロットの径と位置
・パイロットは製品精度に大きく影響するので、曲げ等による変形の影響を受けない場所 (位置)を選択する。
・径は大きい方が安定し易いが、そのために材巾や送りピッチが大きくなり材料歩留りが 悪化しないよう注意する。
・パイロットの本数は、通常2本。
1本の場合は、材料ガイドに工夫が必要。
材巾や送りピッチが大きくなると3本以上入れることもある。 ・製品に精度を要求される穴は、パイロットとして使用しない。 →パイロットにより穴径が大きくなる。 4) 各ステージ配置・・・・レイアウト決定
・パイロット穴は先頭に配置し、基本的には最終ステージまで同じパイロットを使用する。 ・変形要素(曲げ等)のある加工は、なるべく先頭近くに配置する。
→ステージを通過することにより変形が修正されることもある。
・精度を要求される穴や外形は、なるべく後ろの方で同一ステージで加工する。
→同一ステージ加工が困難な場合、優先順位を決め前後のステージに割り振ることが 好ましい。
・ステージに余裕がある場合、曲げ部の穴や外形は抜き後アイドルステージを設けた方がよい。 →アイドルステージでバリを潰す。
・上曲げ等で、金型構造が複雑になることが想定される場合はそのステージの前後に必要に応じ アイドルステージを設ける。
・事前に設計変更が想定される場合は、必要に応じアイドルステージを設ける。
・最終カット切り離しステージの前は、平面度を修正可能なステージを1~2ステージ用意する。 5) 金型に対するレイアウトの位置決め。
・一般的に前後のセンターは材巾のセンターとする。
・左右のセンターは、左側(材料入り口側)を短めに設定し右側(製品排出側)を長めに設定する。 →左側を短めに設定するのは、材料ガイドを長くし、排出側は金型端面に近づけ排出を 容易にする。
・抜き圧力中心と金型中心が大幅にずれないように設定する。 →偏芯荷重を避ける。
(4) 具体例
模擬的に製品図からストリップレイアウト完成までのプロセスを下記図にて示す。
1) 左図模擬製品図をもとに製品設計者と打ち合わせを行う。
金型製作都合及び精度安定・コスト削減対策の結果を右図に示す。
・φ2.6バーリングの曲げ高さ位置が板厚を含んだ寸法(8±0.05)となっており、板厚公差の 影響を受ける。板厚内側からの寸法管理へ変更を要求する。
→板厚外側からの管理が必要な場合、材料発注時特殊公差にて発注する。 →コスト高の要因となることがある。
・φ2.6バーリングの打ち出し方向が曲げの内側となっており、曲げパンチを曲げ元まで逃がし た場合、高さ(8±0.05)の精度が不安定となる。曲げ元に角穴追加を要求する。 →角穴不可の場合、曲げパンチをカムにてスライドさせる。 ・製品測定基準用にφ3穴の追加を要求する。
通常三次元測定機で測定するが、その際φ3穴2ヶ所を基準に測定する。 ・段曲げ内側にR0.3追加を要求する。
R追加不可の場合、2ステージで曲げるようにする。
C8を追加することにより材料ロスを軽減させる。 ・マッチング不可ヶ所を確認する。→後述
2) ストリップレイアウト作成上の注意
・送り方向は、模擬製品図で左右方向とする。
曲げを展開すると、曲げ展開部が外形左側のカット部に入り材料歩留まりがよい。 ・段曲げ部の窓穴は右曲げ後に抜く。
→窓穴は右側曲げに近く、曲げにより引っ張られ曲げ高さ精度に影響が考えられる。 ・丸穴と基準穴は精度を要するため同一ステージで曲げ後に加工する。
・段曲げ部の穴は、位置精度を要求されているので段曲げ後に基準穴と同一ステージで加工する。 ・平面度を修正するステージを用意する。
(5) ストリップレイアウト事例
模擬製品図よりストリップレイアウトの事例を示す。
ストリップレイアウト例データ(参考)
・材幅 85mm
・送りピッチ 44mm
・金型センター 第5ステージの右5mmの位置 ・抜き圧力 22Ton(せん断抵抗35Kg/mm2)
・荷重中心 金型センターに対し X=7.6 Y=3.5 ・使用機械 自動プレス 80Ton ・想定回転数 60SPM
・金型交換時間 約0.5時間 ・材料交換時間 約0.3時間
尚、参考として単発の場合 1案 1、総抜きバーリング 2、上曲げ 3、下段曲げ
形状を得ることのみを目的とした場合の工程で段曲げ部の穴、右曲げ側面のバーリング 位置については展開時寸法決めが困難で量産におけるバラツキに不安を残す。
また、総抜きでバーリング(下穴同時)を行うと抜きカスが上がり製品に打痕となり易い。
2案(1案の不安点対策工程) 1、総抜き 2、バーリング 3、上曲げ 4、窓穴抜き 5、下段曲げ 6、穴抜き
精度を得ることを目的とした場合の工程で現実的ではない。
一般的にはある程度バラツキを想定した工程を組むことが多い。
3案(一般的な工程) 1、総抜き
2、段曲げバーリング 3、上曲げ 4、穴抜き
(6) コスト比較(参考)
順送と単発(前項の3案)のコスト比較を月産5,000台の企画として試算すると概略下表となる。 この試算値は、あくまでもコスト比較の参考値であり実際の価格とは異なる。
金型形式 順送
80Ton
部 品 コ ス ト
計
使用機械 金型代材料費 加工費
130万円 2.79 3.07 5.86
1案単発3工程 50Ton 2案単発6工程 50Ton 3案単発4工程 50Ton
105万円 2.83 8.35 11.18150万円 2.83 120万円 2.83
18.2921.1211.6314.46
尚、材料単価は、フープ材(順送用)で 95円/Kg 切り板(単発用)で 101円/Kg として計算。
(7) 送りさん幅と縁さん幅
・送りさん
外形抜または順送で順次送りながら製品を抜く場合に製品と製品との間隔を設ける。 その間隔のスクラップとなる部分を送りさん(または、さん)と呼ぶ。 その送りさんの幅は板厚の1.5倍以上が好ましい。
但し、金型強度や構造を考慮すると2~3倍以上となることがある。
送りさんを設けず製品の間隔をあけないで加工するスクラップレスと云う方法もあるが製品のバリが 同一方向にならず、製品精度は送り精度に影響される。
・縁さん
送りさんのX方向に対し縁さんはY方向を示す。縁さん幅は送りさん幅の1.2倍以上とする。
但し材料を機械的に送る場合に縁さんの強度不足により送りミスが発生するので注意を要する。
3) プレス技術の基本
3-7.順送におけるマッチング
その際、分けて加工されるつなぎの部分はバリが発生し易い。それを防止するために マッチング(=つなぎ目)と称する凹みを設ける。
外形(及び形状穴)の切断面の一部に凹みを要するため、製品機能としてその部分を スライド等の摺動として使用する場合は不具合となる。 また、外観として好ましくないと判断されることもある。
従って、製品設計と金型設計が事前に協議しその場所を決定する。
左図の製品外形で一部の直線を2回で抜く場合 に抜き残しを防ぐためにオーバーラップさせる。
2回目の抜きが金型精度、材料送り精度、パイ ロットガタにより1回目抜きよりも食い込んで抜く ことが考えられる。
その際、スクラップがヒゲ状となり金型寿命に 影響し製品はバリとなる。
その対策として、1回目の抜きで一部分を深く 食い込ませて抜き2回目の抜きが食い込むこ とを防止する。
製品としては、その1回目の抜きの食い込みが 凹み形状となる。
この凹みは、外形(形状穴)を摺動等で使用す る場合 不都合となるので注意する。
この凹みを一般的にマッチングと称し、凹みの 大きさ は板厚により異なり巾は1~2mm程度で 深さは0.1 ~0.3程度が好ましい。
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